EAをいつ止めるかは数字で決める — ドローダウン判別3ステップ【監査実録】

EAのドローダウン判別のアイキャッチ(資産カーブの谷を拡大鏡で検証するイメージ)

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朝の口座チェックで「止める?」と迷ったら読む記事です

EAが動く時間に口座を開いたら、含み損が資金の9%まで膨らんでいた。この瞬間、あなたならどう判断しますか?「ここで止めたら負けが確定する」と眺めて塩漬けにする人、怖くなって底値で止めてしまう人。監査の仕事をしていると、どちらの後悔も定期的に見てきました。

実は、EA運用で一番高くつくのは、「止めるか続けるか」を気持ちで決めることです。この記事では、監査現場で実際に使っている「想定内か、想定外か」の判別フレームを3ステップで紹介します。読み終わるころには、今抱えている含み損が止めるべきものかどうかを、5分で判定できるようになっています。

ドローダウン判別の3ステップの流れ(バックテスト確認、口座の測定、原因の切り分け)

結論: 止める基準は「想定内か、想定外か」の2択に落とす

先に結論を言います。EAを止めるか続けるかは、今のドローダウンがバックテストの最大ドローダウンの範囲内か、範囲外か、この1点だけで分けてよいのです。

範囲内なら、それはEAの仕様です。設計時に織り込み済みの損失であって、止める理由にはなりません。範囲外なら、何かが壊れています。壊れたものを「まだ耐えよう」と続けるのは、もはや設計の延長ではなく、別の賭けに切り替わった状態です。

監査実録で言えばこうです。あるEAは、バックテストの最大ドローダウン4.2%で設計されていました。ところが実運用では9.8%まで落ち込んだ。差の原因を順に潰していくと、(1)バックテストのスプレッドが固定値前提だった(実市場は特定の時間帯に大きく開く)、(2)テスト環境と実サーバーの間に時刻ずれがあり、エントリー時間帯がずれていた——この2つが、設計にない損失を作っていました。時刻ずれの正体はバックテストを狂わせる「時刻ずれ」の記事で、スプレッドの時間変動の実測はスプレッドの実測比較の記事で、それぞれ詳しく扱っています。

バックテストの曲線と実運用の曲線のドローダウン差の比較イメージ

つまり、この判断に必要なのは度胸ではなく、2つの数字の比較だけです。以下でその数字の出し方を整理します。

ステップ1: バックテストから引き出すのはPFではなく「3つの数字」

判別の材料として使うのは、利益率でもプロフィットファクターでもなく、最大ドローダウン(%)、最大連敗数、回復までの期間の3つです。この3つが「このEAはどこまで痛いのか」の設計値になります。PFが良いからといってDDが浅いとは限りません。利益と痛みは別の分布で動くからです。

引き出す数字 意味 判別での使い方
最大ドローダウン(%) 過去データ上の最悪の落ち幅 今のDDがこれを超えている=想定外
最大連敗数 連続損失の設計上限 連敗が上回っている=確率が合っていない
回復までの期間 DDから回復するまでのトレード数・日数 回復に要した期間が著しく長い=市場が変わった兆候

連敗は「確率」で、気持ちでなく判断できる

なぜ連敗数まで拾うのか。確率で考えると意外なことが見えてきます。勝率55%のEAなら、7連敗は1,000トレードの運用の中で3〜4回は起きる、ごく普通の現象です(0.45の7乗を連続出现の期待値に直すとこの程度になります)。ところが12連敗は、同じ勝率なら約1万5,000回に1回しか来ない順番です。「今8連敗中。もう壊れた?」という相談は、実際には設計範囲内であることが多い。反対に、テスト上あり得ない連敗が出ているなら、それは止まるべきサインです。

ドローダウンは金額でなく「%」で見る

心に刺さるのは金額のほうですが、判別に使うのは%です。理由は2つ。1つは、バックテストと実運用で資金の規模が違っても、%なら同じ物尺で比べられるから。もう1つは、ロットを固定している場合、資金が減るほど同じ損失円の%が重くなるからです。含み損50万円は、資金500万円なら10%、資金100万円なら50%。物差しを揃えないと、比較の前で議論が終わってしまいます。

ステップ2: 今の口座のドローダウンを同じ物差しで測る

測り方は単純です。口座のDD% = (含み損 + 直近の確定損) ÷ 評価残高 × 100。ピークからの下落幅で見る方法もありますが、EA運用の判別なら「今の含み損」と「直近で確定した損失」を足した落ち幅で十分です。

ここで浮かび上がるのが、ロットと資金の関係です。1回の損切り幅(ストップロス)を20pipsと設計した場合、ドル円などの主要ペアでは1万通貨(0.1ロット)あたり1pips=約100円が目安なので、1回の損失は約2,000円。資金100万円なら0.2%です。ところが1.0ロットなら2万円、同じ資金で2%。同じ「20pipsの損失」でも、ロット次第でこのEAは別の機械になります。

ロット SL20pipsの1回の損失目安 資金100万円に対する割合
0.01ロット(1,000通貨) 約200円 0.02%
0.1ロット(1万通貨) 約2,000円 0.2%
0.5ロット(5万通貨) 約10,000円 1.0%
1.0ロット(10万通貨) 約20,000円 2.0%

※pipsあたりの金額はペアとレートで変わります。机上の目安として使い、実際の1回の損失は運用履歴で確認してください。

もう1つ。1回の実損は設計値より少し大きくなるのが普通です。スプレッドとスリッページで、実際の損切りは20pipsをわずかに超えます。見込みは常に保守側で。この「正直に数える」考え方は、スプレッドとスワップの正直会計の記事で詳しくまとめています。また、通信遅延がスリッページを上乗せする話はVPSの遅延と約定品質の実測の記事にあります。

リスクを小さく試したいなら、1回の損失を数百円単位に縮められる小ロットの口座タイプを使う方法もあります。監査でいただく相談でも、まずは小さく回して設計の実感を掴む流れを推奨しています。【広告】PR XMの口座タイプと最小ロットの条件は公式ページで最新をご確認ください(口座タイプ・キャンペーンは変動するため、申込前に公式での確認をお願いします)。

ステップ3: 「想定外」だったときに疑う4箇所

数字が想定外だったら、止めてから原因を探すのが正しい順番です。壊れたものを動かし続けるリスクのほうが、休止させる機会費用より大きいからです。そして疑う場所は、監査の経験上、おおむねこの4つに集約されます。

① 時刻ずれ

テスト環境と実サーバーの時刻がずれると、エントリー時間帯そのものが変わります。「朝の動きに乗る」設計なのに、実運用では昼の動きに乗っていた、というケースは実在します。

② スプレッドの拡大帯

テストが固定スプレッド前提だと、市場が実際に開く時間帯のコストが計算に入っていません。エントリーがロンドン勧定やNYオープンに集中するEAほど、この差が積み上がります。

③ 過剰最適化

特定の相場レンジでだけ機能するパラメータだった場合、レンジが終わった瞬間に想定外の落ち方をします。テスト期間が1年を切る場合や、パラメータの微調整で成績が激変する場合は特に警戒してください。見抜き方は過剰最適化を数字で見抜く4つのサインにまとめています。

④ データ品質(Bidの歪み)

テストデータがBidベースなのか、スプレッドが反映されているのかで、逆指値やトレーリングの挙動は変わります。検証設計の記事で扱ったとおり、データの前提は成績の前提です。極端な例はデータ破損で勝率96%が52%になった監査実録です。

この4つを順に潰していくと、「設計4.2%・実運用9.8%」のような差の9割は説明がつきます。原因が判明したら、修正して再テスト。テストが想定を取り戻すまで再開しない、が監査の基本手順です。

止めるときの手順: 降り方は事前にルール化しておく

想定外と判別したら、次の順で降ります。迷いを入れる場所は1つもありません。

  • EAの自動売買を停止する(まず新規エントリーを止める)
  • 保有ポジションは「即時に成行で全部処理する」か「逆指値を置いて任せる」か、運用開始前に決めておいたルールで機械的に処理する
  • 停止時のDD%、止めた理由、直近の相場環境を1行で記録する(再検証の材料になる)
  • 原因特定と再テストが終わるまで、再開しない

2つ目のポジション処理を「その日の気分」で決めないことが重要です。底で全部切った直後に戻る相場は、監査データの中でも珍しくありません。止める判断は正しくても、降り方が感情だと総合計で負けが残ります。

まとめ: 冒頭の問いに答えます

「含み損9%。止める?続ける?」——答えはこうです。バックテストの最大DDが9%より浅ければ、それは想定外なので止める。深ければ、設計範囲内なので、次に見るのは連敗数とロット。判断に心拍数は使いません。

今日からできる最初の一歩: いま動かしているEAのバックテスト結果を開いて、最大DD・最大連敗数・回復期間の3つの数字を控えてください。それを口座画面の%と並べる。この5分で、あなたのEAが「計算通り」なのか「計算外」なのかが分かります。あなたのEAのドローダウンは、設計の内側ですか、それとも外側ですか?

数字で判断したいEA、お預けください

EA監査(バックテストの設計検証・実運用との差分解)を承っています。納品はご依頼から3営業日以内をめどに、判断根拠が残る検証ログの形でお返しします。「止めるか続けるか」を数字で決めたいEAがあれば、まずは相談からどうぞ。

EA監査を相談する(ココナラ)

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